ねじ・音楽・群(用語のまとめ)

用語のまとめ

位数(いすう)

群の要素の数。群$G$の位数(要素の個数)を表すには、$|G|$と書く。読み方は「ジーの位数」。絶対値記号と同じ形。例:$\lvert D_3\rvert=6$。

well-defined(ウェル・ディファインド)

「きちんと定義できる」という意味。本書で扱うwell-definedとは、代表元をどれに選んでも、答えが同じものに決まること。本書では、第7章「正規部分群と商群」で、剰余類を1つの要素として計算するとき、同じ剰余類の中からどの代表元を選んでも、答えが同じ剰余類になることを確かめた。この部分がwell-definedの話である。

可換群(かかんぐん)

すべての要素で、$a\circ b=b\circ a$が成り立つ群。アーベル群ともいう。

例:巡回群はすべて可換である。有限巡回群$C_2$、$C_4$、$C_{12}$などがその例である。

核(かく)

準同型によって、行き先の単位元に送られる要素を全部集めたもの。$\ker\phi$(カー)と書く。たとえば$\phi:D_3\to C_2$で、$e,r,r^2$がすべて$0$に送られるなら、$\ker\phi=\lbrace e,r,r^2\rbrace$となる。核に入っている要素は、$\phi$で送った先では見えなくなる。核は「準同型写像が何を区別しないのか、という指標」ということができる。

逆元(ぎゃくげん)

「$a$を打ち消す操作」のこと。群$G$のある要素$a$に対して、合成すると単位元$e$になる要素。式で書くと、$a\circ a^{-1}=a^{-1}\circ a=e$。

群(ぐん)

次の4つの条件を満たす操作の集まり。

  1. 操作を組み合わせても、元の集まりの中に収まる(閉性)
  2. 何もしない操作がある(単位元を持つ)
  3. どの操作にも、元に戻す操作がある(逆元を持つ)
  4. 同じ順番で操作するなら、途中をどこで区切っても結果は変わらない(結合則)

群論(ぐんろん)

群の性質を調べる数学。

ケーリーグラフ

群の元(本書では、元と一対一に対応する状態)を点で表し、生成元を左から合成するとどの点へ移るかを、矢印で示した図。本書の図表1-7では、$r$と$f$による移り変わりを描いている。生成元をくり返して、群の元をすべてたどれる様子が見える。

結合則(けつごうそく)

三つの元を続けて演算するとき、順序を変えずに、まとめ方(括弧の付け方)だけを変えても結果が同じになる性質。$(a\circ b)\circ c=a\circ(b\circ c)$と表す。結合法則ともいう。順序を入れ替える交換則($a\circ b=b\circ a$)とは異なる。

元(げん)

群を作っている1つ1つの要素。「要素」と同じ意味で、群論では「元」と呼ぶことが多い。群$G$の元$g$を、$g\in G$と書く(「$g$は$G$の元である」と読む)。本書で扱う群($D_3$、$C_n$など)の元はどれも、図形や時計を動かす操作である。そのため本文では、同じものを「操作」「要素」「元」と呼んでいる。例:$D_3$の元は$e,r,r^2,f,rf,r^2f$の6個。

関連語:単位元、逆元、生成元、代表元(どれも、この意味の「元」である)。

合成(ごうせい)

操作を続けて行い、一つの操作としてまとめること。本書では、先に$h$、次に$g$を行う合成を$g\circ h$と書く。あとから行う操作を左に書く。$g\circ h$は、$\circ$を省いて$gh$と書くこともある。

式の書き方

$e$に120°時計回りの回転を加えることは、$r\circ e=r$とかく。$\circ$は「操作を加える」という意味の記号。操作は、左側に書き加える。群は、操作の順番を変えると、結果が異なることがある。

指数(しすう)

群$G$の部分群を$H$としたとき、$G$を$H$で割ったときの剰余類の個数。$[G:H]$と書き、「$G$における$H$の指数」と読む。

$G$が有限群のとき、指数を$n$とすると、

$n=\frac{|G|}{|H|}=[G:H]$

である($\frac{|G|}{|H|}$は、「$H$の位数・分の・$G$の位数」と読む)。

例:$|G|=6$、$|H|=2$なら、$n=3$。

自然な射影(しぜんなしゃえい)

群の各要素を、「自分が入っている剰余類」へ送る写像のことで、$\pi$(パイ)と書く。正規部分群$N$で商群$G/N$を作るとき、$\pi:G\to G/N$として、$g$を$gN$に送る。細かい要素の違いを見ず、同じ剰余類の仲間を一つにまとめる写像と考えればよい。

写像(しゃぞう)

集合$A$の各要素に、集合$B$の要素を1つずつ対応させる規則。$A$を写像の「出発の集合」、$B$を写像の「行き先の集合」と呼び、対応関係を$f:A\to B$のように書く。

終域(しゅういき)

写像の「行き先として用意された集合」。たとえば$f:A\to B$なら、$B$が終域。実際に到達したものだけを集めた集合が「像」である。

巡回群(じゅんかいぐん)

一つの操作の繰り返しだけで全部の操作が出てくる群。$C_n$と書く。添字の$n$は、操作の個数、つまり位数である。

準同型写像(じゅんどうけいしゃぞう)

ある群から別の群へ、計算の仕組みを保ったまま要素を送る写像。準同型写像を略して、準同型と呼ばれることも多い。

$\phi:G\to H$ …①で、$G$で先に$g,h$を合成してから送っても、先に$\phi(g),\phi(h)$を送ってから$H$で合成しても同じ結果になるとき、$\phi$(ファイ)を準同型写像という。式では$\phi(gh)=\phi(g)\phi(h)$ …②と書く。

(補足)①は「ファイ、ジーからエイチへの写像」と読む。②は「ファイ・ジーエイチ・イコール・ファイ・ジー・かける・ファイ・エイチ」と読む。

準同型定理

「$G$を$\ker\phi$で割った商群は、$\operatorname{Im}\phi$と同型である」ということ。式で示すと、

$G/\ker\phi\cong\operatorname{Im}\phi$

読み方は、「ジー割るカー・ファイは、イメージ・ファイと同型である」。

群の準同型写像$\phi:G\longrightarrow H$に対して、核$\ker\phi$で作った商群$G/\ker\phi$と、像$\operatorname{Im}\phi$は同型である。つまり、$\phi$が同じものとして扱う元を核でまとめると、できた商群は、$\phi$で実際に到達する像と同じ計算の仕組みを持つということ(第9章)。

商群(しょうぐん)

群$G$の正規部分群$N$による剰余類を、一つ一つの元とみなして作った群。$G/N$と書き、「ジー割るエヌ」と読む。演算は$(aN)\circ(bN)=(a\circ b)N$と定める。$N$が正規部分群なので、代表元をどれに選んでも、答えは同じ剰余類に決まる。

乗積表(じょうせきひょう)

二つの元を合成した結果を、行と列の交わるマスに並べた表。ケーリー表ともいう。本書では、行の元$g$と列の元$h$の交わるマスに$g\circ h$を書く(列が先、行が後)。操作の順序や、部分群・剰余類の構造を調べるために使う。

剰余類(じょうよるい)

部分群$H$を、群$G$のある要素$g$でずらしてできる集合。左剰余類と右剰余類がある。剰余類は、群全体を重なりなく、余りなく分割する。

正規部分群(せいきぶぶんぐん)

群$G$の部分群$H$のうち、すべての$g\in G$について$gH=Hg$を満たすもの。左剰余類と右剰余類が一致する。

生成元(せいせいげん)

その繰り返しで群の全部の操作が作れるような操作のこと。群によっては、1つでは足りず、2つ以上の生成元が必要な群もある。

像(ぞう)

写像によって、行き先に実際に現れる要素を全部集めたもの。$\operatorname{Im}\phi$と書き、「イメージ・ファイ」と読む。たとえば$\phi:D_3\to C_2$で、実際に$0$と$1$の両方に到達するなら、$\operatorname{Im}\phi=\lbrace 0,1\rbrace=C_2$となる。「終域」と区別することが重要で、行き先として用意された集合全体が「終域」、像は実際に到達したもの。像と終域が一致するとは限らない。

代表元(だいひょうげん)

剰余類の中の任意の1つの要素を指す言葉。剰余類$gH$を作るときの$g$のこと。異なる剰余類を漏れなく表すには、代表元を各剰余類から1つずつ選ぶ。

単位元(たんいげん)

「何もしない操作」のこと。群$G$の中で、どの要素$a$に合成しても$a$を変えない。「恒等操作」ともいう。

置換群(ちかんぐん)

$n$個のものを並べ替える全ての方法の集まりを置換群といい、$S_n$と書く(注)。添字の$n$は、並べ替える対象の個数。位数は、$n$個を一列に並べる方法の数。$S_3$の位数は$3\times2\times1=6$、$S_4$の位数は$4\times3\times2\times1=24$となる。

(注)

「$S_n$は対称群」とするのが正確だが、本書では「置換群」と呼ぶことにする。

同型(どうけい)

二つの群の元が一対一に対応し、その対応が演算も保つこと。群$G$と$H$が同型であることを、$G\cong H$と書く。要素の名前や見かけが違っても、群として同じ構造を持つことを表す。

同値関係(どうちかんけい)

次の三つの性質(三律(さんりつ))を満たす関係のこと。

(反射律)

$x$と$x$の間には、常に「ある関係」が成り立つ。言い換えると、自分自身にも、「ある関係」が成り立つ。

(対称律)

$x$と$y$の間に「ある関係」が成り立つなら、$y$と$x$の間にも「ある関係」が成り立つ。

(推移律)

$x$と$y$の間に「ある関係」が成り立ち、さらに$y$と$z$の間にも「ある関係」が成り立つなら、$x$と$z$の間にも「ある関係」が成り立つ。

同値類(どうちるい)

類別により、できた組の一つ一つ。

二面体群(にめんたいぐん)

正$n$角形を動かして元の位置に重ねる操作の集まりを二面体群といい、$D_n$と書く。正三角形の群は$D_3$、正六角形の群は$D_6$である。添字の$n$は$n$角形の$n$である。巡回群の$n$とは違うので注意すること。正$n$角形には回転が$n$個、鏡映が$n$個あるので、位数は$2n$になる。

非可換群(ひかかんぐん)

可換群ではない群(例:$n$が3以上の二面体群$D_n$。$D_3$は位数6)。

非正規部分群(ひせいきぶぶんぐん)

正規部分群でない部分群。

左剰余類(ひだりじょうよるい)

部分群$H$のすべての要素$s$に、左から群$G$の要素$g$を合成してできる集合。$gH$と書く。$g$と$h$が同じ左剰余類に入るための条件は、$g^{-1}h\in H$である。これは「$g$インバース$h$は$H$に属する」と読む。$g$の逆元と$h$の積は、$H$の要素であるという意味である。

部分群(ぶぶんぐん)

群の一部を取り出したものが、群になっているもの。

右剰余類(みぎじょうよるい)

部分群$H$のすべての要素$s$に、右から群$G$の要素$g$を合成してできる集合。$Hg$と書く。

無限群(むげんぐん)

要素数が無限の群。例:整数全体を要素とし、足し算を演算とする群。

有限群(ゆうげんぐん)

要素数が有限な群。

ラグランジュの定理

群$G$(注)の位数は、部分群$H$の位数で割り切れるということ。剰余類の個数(指数)を$n$とすると、$(G\text{の位数})=(H\text{の位数})\times n$である。

(注)

この群は、有限群(要素数が有限な群)が前提である。無限群では「要素の個数を数えて割り算をする」というラグランジュの定理の考え方が、そのままでは使えない。

類別(るいべつ)

重なりなく、余りなく、組に分かれること。

$\in$

「〜に属する」「〜の要素である」。例:$g,h\in G$。読み方は「$g,h$は$G$に属する」。群論では意味を意識して、「$g$と$h$は$G$の元である」と読んでもいい。意味は「$g$と$h$は、どちらも群$G$の要素である」ということ。

$\notin$

「〜に属さない」。

$\subseteq$

「部分集合である」。$A\subseteq B$は「$A$のすべての要素が$B$にも属する」。$\subset$も同じ意味で使われることが多い(教科書によっては、$\subset$を「真部分集合」に限定して使う場合もある)。

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