なぜ、ギジュっちゅ!を立ち上げたかというと、高校工業の授業(座学)は、次のような問題を抱えていると思ってきたからである。
A. 教科書側の問題
①旧態依然とした学習内容
教科書が「確立された技術を基礎とし、正確な記述に努める」ことには同意するが、題材の取り上げ方が数十年にわたり変わっていないものも多く、ものづくりの現場で実際に使われる技術との乖離が広がっている。
②教科書改訂制度の制約
教科書の改訂は数年単位で行われるため、最新技術を即時に反映することは難しい。であれば、基礎的な内容が現在の技術へどのように発展しているのかという接続がなされるべきだが、教科書だけでなく指導書にも十分示されていない。
③JISをそのまま踏襲した記述
教科書には、JISそのものとしか思えない文章が見受けられる。JISは「規格として正確に定義する」ために書かれたものであり、それを踏襲するだけでは、高校生にとっては「何のためにこれを学ぶのか」が見えない。
④演習問題が抱える課題
教科書やワークの問題には、題材の面白みがない、記述が不正確、わかりづらい、量が不足しているといった課題がある。それは「学びづらさ」「教えづらさ」につながっている。普通科目では「わかる」や「受験対策」を軸に各出版社が競い合って教材を磨いているが、工業科目にはそうした競争原理がない。
B. 現場側の問題
①負担の増加による意欲の低下
教科書は、教員が最新動向を補足することを前提としていると考えられる。しかし現場の教員にはその余裕がなく、高齢化、人手不足も進んでいる。現場にいた者としてはっきり言う。教える側の意欲は(年齢性別関係なく、程度の差はあれ)低下している。
②現状維持で手一杯
生徒の学力低下により、現行の教科書内容を指導すること自体が難しくなっている。その結果、従来の授業レベルを維持することで手一杯となり、改善の必要性が生じない。
③教育の属人化と機会の不均衡
魅力的な実習や最新動向を取り入れた授業は行われている。ただ、それらは教員個人の専門分野のみ、あるいは先進的に取り組んでいる一部の学校に限られ、多くの生徒が良質の学びを得られる状況にはない。
ギジュっちゅ!の設計方針
これらの課題を踏まえ、わからなかった人もわかっている人も誰もが楽しく学べる工業Web教材の制作に挑戦する。
・具体から抽象へ進む構成
抽象的な定義や公式をいきなり与えず、実例や身近な現象から学習を始める。具体を先に置くことで、後から学ぶ定義が「何のためのものか」を伴って理解される。学ぶ順序を、抽象から具体へではなく、具体から抽象へと組む。
・成立の経緯をたどる
技術や規格は、最初から完成形で存在したわけではなく、どれにも歴史的背景がある。工学や科学が発展してきた過程を自分の手でたどることで、「なぜそうなっているのか」という気づきを生む。学ぶ意義は、この経緯を知ることそのものから立ち上がる。
・現場の技術への接続
基礎の解説で終わらせず、その内容がものづくりの現場で実際に使われている技術へどうつながっているかを示す。教科書の改訂周期では追いきれない最新動向を、可能な範囲で反映する。
・わかりやすさと正確さの両立
題材は、身近なものやものづくりの実例から作り、学びやすさを優先する。ただし、わかりやすさのために正確さを犠牲にはしない。記述の水準は国家試験に通用する正確さを保つ。
やさしさと深さの両立
初学者には、基本からやさしく丁寧に解説し、クイズ形式などで楽しく学べるようにする。深く知りたい人には、より詳しい解説を準備し、他(多)分野へつながるところまで導く。学び始めた人も、もっと深めたい人も、それぞれの位置から一歩先へ進める。

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